クロキメモ

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観た映画02-胸騒ぎの恋人

 

胸騒ぎの恋人 [DVD]

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 一つ前のメモでも話題にあげたグサヴィエ・ドラン。

僕の視聴遍歴はマイ・マザー、わたしはロランス、トムアットザファーム、そして今作ということを先に言っておいた方が良いと思う。姉から「カナダにヤバい監督が居る」と言われ見始めたので事前知識が多少なりあったということも。

つまり、僕の中でグサヴィエ・ドランは作品以前にゲイだった。そしてその情報は「マイ・マザー」と「わたしはロランス」で実となった。こういうと、まるで事前情報ありきの偏った目で観たからの様に思われるけれど、多分、恐らく、なんの知識もなく観ても勘付いていたと思う。カルフォルニアはヒルクレスト、ニューヨークはヘルズキッチンと、何故だかゲイに恵まれた地に住む機会が多い僕は人より気付きの感覚が研ぎ澄まされているのだ(ゲイにやたらとモテます)。

そんな話はともかく。彩度の高いルックだったり頻繁に出てくる詩の引用、あとはもちろんセクシャルマイノリティとしてのテーマは「ゲイだからなー。」でなんとか納得出来る。もちろん世のゲイの方々に失礼だし、そんな簡単に片付けられる話では無い。特に、アンタ仮にも映像に携わってるんだろうがと言われてしまうと「ゲイだから」は「彼は天才だから」と同じく負けを認めてしまう、悔しいことだ。でも、取り敢えずそういった不敬で怠惰な感じで飲み込んだのが最初。

そんな第一印象はトムアットザファームで覆された。もちろん上で挙げた3点はそのままだけど、なんと言っても怖いの。うっわ鬼気迫る絵作りが出来る様になっていやがる!と、またしても悔しい思いを。その時は飲み込めすらしなかった。

そんなこんなで見て、また負けを認めるのが恐ろしくて、iTunesでレンタルしてから残りレンタル期間があと1日まで引き摺って観たのが今作。

結果から言うと、今までで一番好きだった。ストーリーは簡単に言うと、ゲイの男の子(フランシス)とストレートの女の子(マリー)が共通のイケメン(ニコラ)に恋をした際の、出会いから別れまでのそれぞれのジェンダー差を描いた話。いやゲイって中身は女の子なんじゃないの?って話なんですが、そら当然の様に違うんだと思う。その辺りの機微と違いが面白い。そしてクライマックス後のフランシス(グサヴィエドラン)のヒスを起こすシーンが最高。今まで見た3作は基本的にテーマから必然的に重い。ただ今作は、その重さを最後の最後で笑いに変えれているのがとても良かった。爆笑して、3回くらい見直した。あれは絶対に、絶対に男でも女でも出来ない演技だ。

ただ、賞賛出来たという意味では鬼気迫る感じだったり、少なくとも今の僕では到達出来ない何かは薄め。マイ・マザーとわたしはロランスの間で撮られた作品ですよ、と言われると「なるほどねー」となる。それはもちろんグサヴィエ・ドランの成長性のヤバさの表れでもあるんだけど。なんだか安心しました。あんた人の子やったんやね、と。

 

好きだった点:

ラストシーンのマリーとフランシス

節々に出てくるモンタージュの絶妙に誰でも分かる感じ

ニコラに誘われた二人がおめかしをして待ち合わせ場所まで行く時の音楽(西部風)

ヒスって帰ろうとするマリーを引きとめようとするフランシスとニコラの3shot